第12章 Season 1 同居人再び
そして、治さんが玄関に向かうのに私はついていった。
「それじゃあ、行ってきますね。また、再来週に」
「うん。行ってらっしゃい。気をつけてね。あ、奥さんにもよろしく。っていうか、奥さん妊娠したんなら、そっち優先しなきゃ!うちには来れるときだけでいいから。自治会のはお願いしたいけど……。でも、私の二の舞にならないように、今度はちゃんとしなきゃだめだよ?おんなじことしたら私が殴りにいくからね?」
「はい。それは痛いほど心得てます」
以前よりもはっきりと治さんに意見できるようになった私の小言に嫌な顔ひとつもせずに、子供たちの頭を撫でてから治さんは玄関から出て行った。
玄関まで見送ってドアが閉まった後子供たちはまたリビングに駆けて戻り、ふぅと息をついた私の肩を後ろから抱きしめてくる腕があった。
「どしたの?」
「ん?仮にも元旦那さんのところが妊娠したって聞いたら凹んでるんじゃないかなって」
「そう、だね。そりゃ、ちょっとはね」
言いながら抱きしめてくれた腕に指をかける。
「不安になったらいつでも言え?俺が、受け止めてやるから」
「うん、ありがと」
「こらー!抜け駆け厳禁!!」
玄関でくっついている私と紘の所に裕が駆け込んでくる。
今の私、彼氏が6人いる、それも共同生活中という状態だ。
傍から見たら、事情を知ったらおかしいかもしれない。
でも、言わなきゃわかんないし、私は今が楽しい、と思える。
幸せなんて世間の目じゃ決められない。
私が幸せだと思うそれこそが、この世の中で一番の幸せなのだ。
たとえ、どれだけその中身が複雑だろうとしても……。