第12章 Season 1 同居人再び
「お願いします」
治さんは手帳を出して、自治会の会合の予定を書き込み始めた。
治さんとは離婚はしたのだが、世間体、父親という存在、その他諸々でまだこの家に出入りしてもらっている。
昨日はうちに泊まったから、ここから出勤らしい。
「貴女は、最近どうですか?うまく、いっていますか?」
「大丈夫だよ!ありがと。治さんはどうなの?」
「僕のところも順調です。そういえば」
と治さんは嬉しそうな恥ずかしそうな困ったような顔をした。
「ん?」
「子供が、できました」
「そうなの!?」
びっくりした私の声に、裕がこちらを向く。
「何?どうしたの?」
「治さんの奥さん妊娠したって!!」
驚きと、ほんの少しチクンとした胸の痛み。
少しだけ、ほんの少しだけ複雑だったけども、私が大きな声で報告すると、リビングにいたみんなが治さんに口々に祝福の言葉を述べる。
「おめでとうございます」
「わー、すごいねぇ」
「他人事だけど、なんか嬉しくなっちゃうわ」
「次は男の子かな?」
「寧々ちゃんと乃々ちゃんのきょうだいが増えるんじゃね」
みんなの言葉に、寧々と乃々はよくわからない、というような顔をしていた。
「慧さんは?もう子供作らないの?」
そしてからかうような裕の言葉に、
「いらないよ!こんなにいっぱい子供抱えてる状態で更に子育てなんてどう考えたって無理でしょ?」
ここにいる全員を子供に例えて言い返した。
「ぶぅ、僕たち子供だって」
「しょうがなかろう。なんもかんもやってもらっとる状態じゃし。実際慧さんが妊娠したらこの家めちゃくちゃになるじゃろうし」
「慧ちゃん、今日の分飲んだの?」
「飲みました!」
それぞれが勝手なことを言い始めて、私はイラだったように順さんに当たった。