第12章 Season 1 同居人再び
散々悩んで、私が出した結論。
そのひとつは、治さんとは離婚すること。
そしてもうひとつ、子供は私が引き取ること。
あの家は売ってしまって、彼らとの共同生活は崩壊した。
はずだった。
はずだったのだが、半年たった今妙な事になってしまっていた。
「寧々ちゃん!早う着替えせんと幼稚園間に合わんでよ!?」
「慧、アイロン掛けたシャツない?」
「慧さん、今日僕バイトあるから遅くなるね」
「ちょっと、ボールペンどこよ」
「俺もう行くわ」
「慧さん、乃々が!!」
私の周りで6人の男たちが口々に何か言っている。
「ありがと拓。寧々早く着替えて!紘ごめん、ワイシャツ私の部屋に掛けてある。判った。頑張ってね翼。順さん、ボールペンは引き出しの中です!!祥さん気をつけていってらっしゃい。裕何?乃々が何かした?」
それぞれに返事をしながら私は乃々の元に駆け寄った。
あの家は売ったはず、だった。
売ったはずだったのに、今私たちはあの家にまだ住んでいる。
いつの間にやら彼らが治さんと交渉して、6人でローンを引き継いだのだそうだ。
そして、私はバイトをやめて、子供たちの母親、そしてこの家のハウスキーパーという位置づけで生活している。
相変わらずの滅茶苦茶っぷりで私の生活は変わったようであまり変わっていなかった。
二階の部屋と子供部屋はそれぞれが今までどおり。
二階のリビングとして使っていた部分に祥さんが、そして、一階の寝室を私の部屋に割り当ててもらい、和室に順さんの部屋を作った。
拓と翼は順さんと話し合って、ちゃんと和解したらしい。
「順さん、僕も書くもん使うんだから、ジャマ!」
「やだもー、年上敬いなさいよ」
「敬っちょれんちゃ」
よくこんな風に言い合っている姿を目撃する。
しかし、その言葉には棘はなく、お互いを認め合っているような感じだった。
そして、順さんの気持ちも落ち着いたらしく、私と同時期に夜中のスーパーのバイトを辞め、昼間の仕事一本に切り替えていた。
「あの、今度の自治会のなんですが」
治さんが乃々に手を焼いている私のところにきて声をかけてきた。
「あぁ、そっか。そんなのがあったね。治さん、出れる?」
「大丈夫です。僕が行きますね」