第9章 Season 1 苛立ち
「……ごめん、俺、慧さんに初めてキスしたときに、俺の人生滅茶苦茶にしちゃうからやめとけって言われたのに。紘くんともっていうのも、判ってたのに。それなのに、俺、勝手に慧さんに本気になって、勝手に慧さんを自分のものにしたくて」
違う位置で噛み合わさり始めていた私の歯車は、またぎしぎしと音を立てて壊れようとしていた。
「慧さん……、俺それでもやっぱり慧さんのことが嫌いになれない。だから、せめて俺の一番近くにいてよ……」
裕は私の肩に頭を乗せて、泣いた。
裕の本気の気持ちが痛かった。
始めから判ってた事じゃないか。
それなのに、私はそんな裕の気持ちを見て見ぬ振りして押さえつけようとしてた。
「ごめん、ごめんね、裕」
そう返すので精一杯だった。
私は、泣いている裕の背中に腕を回して、そっと抱きしめた。
好きとか嫌いとか、愛してるかそうじゃないか、そんな話じゃなくて、私は今、裕を、彼らを守りたかった。