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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】


「ただいま戻った」


玄関が開く音と、愛してやまない杏寿郎さんのそんな声に惹かれ、私は春巻きの皮に具を包んでいた手を止める。そのまま途中の状態でお皿に一旦置き、さっと手を洗うと玄関へと急ぎ向かった。

リビングを出て玄関まで一本道の廊下の向こう側を見ると、ケーキの箱を片手に持った杏寿郎さんが靴を脱いでいるところだった。土曜日の今日は部活動のみのため平日仕事に向かう時とは違い上下黒のスポーツウエアを身にまとっている。シャツにニット、スラックスに革靴。そんな杏寿郎さんの姿は毎日見ているのにも関わらず胸がときめいてしまう。

けれどもやはりたまに見るこんな姿も


…かっこいいなぁ…


見とれてしまうほどに、私の夫は素敵だ。リビングのドアの前で立ち止まり、杏寿郎さんを見つめていると


「…すずね…ただいま」


ちっとも玄関まで来ない私にしびれを切らしたのか、杏寿郎さんが腕を広げ私が来るのを待ち構えるようにしながらそう言った。


…杏寿郎さん…可愛い


小走りで杏寿郎さんの元へと近づき


「おかえりなさい!杏寿郎さん!」


そう言いながら、杏寿郎さんの左手にケーキがもたれているのも気にせず飛び込んだ。


「あぁ…ただいま、すずね」


空いている右腕で私をぎゅっと抱きしめてくれる杏寿郎さんにすりすりと頬を寄せ、大好きな杏寿郎さんの温もりを堪能し、頭一つ分以上上にある杏寿郎さんの顔を見上げる。


「道は混んでいませんでしたか?」


ゆっくりと杏寿郎さんから離れ、自然な動作で杏寿郎さんの左手からケーキの箱を回収しながらそう尋ねる。


「普段の土曜日よりは混んでいる印象だ!やはりクリスマスイブはみな出かけたいと思うようだな」


そう。今日はクリスマスイブ。杏寿郎さんと私が夫婦になって…いやむしろ、杏寿郎さんと私にとって初めて2人で迎えるクリスマス。しかも先ほども述べたように、今年は”クリスマスイブが土曜日”で”クリスマスが日曜日”という最高のパターンだ。

記憶を取り戻し、杏寿郎さんと再会する日が来るまで、杏寿郎さんと2人でクリスマスをお祝いできる日が来てくれるのを夢見ていた。

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