タイムカプセルの一ヶ月【リヴァイ/進撃の巨人/現パロ】
第2章 2
居酒屋パラディ
木造の建物に、紺色の暖簾。
ついこの間新しくオープンしたばかりの店なのに、木の温もりやぼんやりと灯る提灯がどこか懐かしさを感じさせる。
側に寄ると煮物だろうか?暖かい和食のいい匂いがする。
外の看板には手書き風の書体でメニューが書かれていた。
「ほら、帆立の塩麹バター蒸し、漁師のこだわり鯛飯…あ、見て!馬肉のユッケだって!そそるメニューばっかじゃない!?」
はしゃいで振り返れば明後日の方向を見たリヴァイの姿が目に入る。
迷惑だったかな…?
不安に駆られて声をかける。
「リヴァイ?」
「ん?ああ。悪くねえな」
口の端をニヤリ、と吊り上げる笑い方。
あ、この笑い方は結構気に入っている証拠だ。
胸を撫で下ろす。
「んじゃあ決まりね。はいろ」
暖簾をくぐると活気の良い出迎えの声と「何名様ですかあー?」という甲高い女性店員の声が同時に響く。
「2人です」
とピースを作って伝えると、横並びのカウンターの席へ案内された。
とりあえずビールを2つ注文する。
グラスごと冷えた中ジョッキが、色鮮やかに茹でられた枝豆と一緒に一瞬で出てきた。
「じゃあ、再会に乾杯」
「ああ」
ガツンとグラスが交わる。
ビールをちびちびと喉に流し込みながら、隣のリヴァイをチラと盗み見た。
トレンチコートとスーツのジャケットを脱いだリヴァイは、かなりガタイの良さが目立つ。
薄いブルーのシャツの上からでも鍛え上げられた筋肉がわかるほどだ。
「…何かスポーツでもやってるの?」
「あ?」
「いや、筋肉すごいよね」
「…触るんじゃねえぞ」
「触らないよ!」
昔、リヴァイは運動神経が抜群だったことを思い出す。
体育はいつもお手本をやっていたし、部活なんかでも助っ人に呼ばれてばかりだったと思う。
そんなリヴァイを遠くから見ては友達とキャッキャとはしゃいでいたっけ。
(そのときのことを話そうか…)
一瞬、考えがよぎる。
「リヴァイに片思いしてたんだよ」
なんて言ってみたら、どんな顔をするだろうか。
いや、やめておこう。
結婚適齢期の30歳。
軽はずみな発言は必要以上に自分を傷つけることになりそうだ。
結婚を焦った女からモーションをかけられたと思ったら、いくらリヴァイでもビビってしたうだろう。