タイムカプセルの一ヶ月【リヴァイ/進撃の巨人/現パロ】
第1章 1
ガタンガタンと規則正しく揺れる車内
窓に手をあてていると、ひんやりと外気が伝わってくる。
季節はもう秋の暮れ。
19時ともなると真っ暗になるようになってきた。
季節が変わっても変化のない風景はいくつもある。
(あの家、またあの緑のシーツ干してる)
(あ、あのお爺ちゃん、今日も犬の散歩してる)
見慣れた通勤電車からの景色。
退屈で面倒なこの時間でも、ささやかな発見や変化を見つけては楽しんでいた。
午後7時を過ぎた普通電車は、学校帰りや仕事帰りの人たちで程よく混み合っている。
30歳。
今の会社に入ってもうすぐ9年めになろうかとしている。
大きな案件は当たり前のように任せられるようになってきた。
同期の中には役職が付く人もちらほら出てきている。
仕事にやりがいは感じていたが、2ヶ月に一度は「辞めてやる!!」と思うような日々だった。
毎日電車に乗って6駅離れた職場に通い、2・3時間残業してはまた6駅離れた自宅へ帰る毎日。
同年代の友達の結婚ラッシュが始まって、ご祝儀貧乏であることが最近の鉄板自虐ネタだ。
周りでは出産した友達も珍しくはなくなってきた。
結婚していない、彼氏すらいない、ついでに出会いすらない
昔思い描いていた30歳とはかけ離れた毎日を送っていて、小さい頃の自分が見たら泣き出すだろう。
でもこの日々に不満があるわけではない。
趣味もあるし、世の中には娯楽が溢れている。
退屈なわけではない。
電車からの風景のように、毎日のささやかな発見や変化を楽しんで生きていた。
コツンー
「あ」
「あ、ごめんなさい」
「いや…」
隣の人と肘が当たってしまった。
碌に目も合わせず軽い会釈で謝る。
それが気に食わなかったのか、相手は私の横顔を凝視してきた。
(え、そんなに怒る?もう一回しっかり謝ろうかな…でもむしろそっちの肘が当たったと思うんだけど…)
隣の人の顔を見れずに悶々とする。
背はあまり高くないようだが、どうやら相手は男性だろう。
下手な結果を招きたくない。
威圧的に言う?しおらしく謝る?
慌てて複数のパターンを想定して頭を回転させていた、そのとき
「あかね?」
「…へっ?」
相手に名前を呼ばれて、思わずバッと横を向いた。
「え、嘘。リヴァイ?」
「やっぱり… あかねか」
隣の男は、小学・中学時代の同級生のリヴァイだった。