タイムカプセルの一ヶ月【リヴァイ/進撃の巨人/現パロ】
第4章 4
12月に入った。
あれからリヴァイとは電車でたまに会うことができた。
行きの電車では全く会わなかった。
そもそもの出勤時間が異なるのだろう。
帰りの電車ではお互い残業で疲れた顔を突き合わせることが多かった。
会えば仕事のことなど他愛もない話をしたし、会えなければ少し残念に思う。
そんなことを繰り返していた。
でも今日はリヴァイのことを考える余裕もない。
頭の中は全く別のことで埋め尽くされている。
『こんなミスすんなんて、今までぼーっと仕事してきたのね』
『社会人として恥ずかしくないのか!!』
『君に任せたことが間違いだった』
上司や客の言葉が頭の中をリフレインする。
涙はすんでのところで留まっているが、泣こうと思えばいつでも泣き喚けるくらいにショックが大きい。
幸い今日の車内は空いている。
足を投げ出してぼーっと座りながらこのミスの反省と後悔を何回も何回も繰り返していた。
他人から怒りの感情をぶつけられると言うのはいつまで経っても慣れない。
何人かの仲間は「気にするな」と言ってくれたが、ミスをフォローしてくれた人たちへの申し訳なさがあって今すぐにでも仕事を辞めたい気分だった。
今までこんな失敗をいくつも乗り越えてきた。
辞めてやるとは思いながらも9年も頑張ってきたんだ。
(でも今度ばかりは、限界かもしれない…)
抑えている涙がまた溢れてくる。
スヌードをたくし上げて口元を隠した。
足下をぼーっと見ていると、私の前に誰かが立った。
磨き上げた黒い革靴。
「オイ…」
低い声が頭上から降ってきた。
思わず顔を上げる。
とても心配そうな顔をしたリヴァイが立っていた。
「どうした…ひでぇツラしやがって」
「…りばい…」
「隣、いいか」
コクン、と頷く。
隣に座るとリヴァイは屈むようにして私の顔を覗き込んだ。
「オイ、本当にどうした…」
「いや…仕事で…ちょっとね」
「…そうか」
「心配してくれて、ありがと」
そこまで言うと急に胸が苦しくなって、ポロポロと涙が出てきた。
「まあ、なんだ。飲むか」
「ぅっ…ひっく…」
リヴァイが気を遣ってくれるのが嬉しかった。