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茨の道を行きし貴女へ【H×H】

第2章 出航×釣竿の少年


 その夜、船は嵐の中を進むことになった。私は隣のクラピカと同じようにハンモックの中に体をうずめた。雷鳴が室内にも響き、海は大荒れで、船は大きく揺れ続けた。大半の大人はその揺れに耐えきれずまるで大きな物体のように飛び回った。あまりの揺れにほぼ全員が吐き気に襲われ、嵐が収まったころには伸びきっていた。クラピカと私、ゴン、それからスーツの男だけがケロリとしていた。
 
 ゴンはうなだれた男たちの看病をし始めた。放っておいたらいいのにと思いながら、ゴンの事が気になった私はついつい手を貸してしまっていた。
 そんなことをしていると船長が部屋に入ってきた。あたりを見渡してふんっと鼻を鳴らして、また舵取りに戻っていこうとした。

 「待って、船長さん」
 「どうした嬢ちゃん、気分でも悪くなってきたか」
 「そうじゃない。ただここの、のびている連中そろそろおろした方がいいんじゃない。まだ荒波は続くようだし」
 
 はっと船長は高らかに笑って、私の名前を聞いた後去っていった。

 「イリス、どうしてそう思うの」

 ゴンがいつの間にか私の隣に立っていた。

 「ただの勘だよ」
 「確かに塩気が多いもんし風も生ぬるい!オレ、ちょっと外見てくる!イリス、これそこの寝てるおじさんに渡して」

 塩気?ゴンはよくわからない事を話して、甲板に出て行った。私はゴンのいうことを聞いて、おじさんに水と薬草を手渡した後、ハンモックに横になった。
数分後に船内の放送で大波の予報が話された。

 「これからさっきの倍近い嵐の中を航行する!命が惜しい奴は今すぐ救命ボートで近くの島に引き返すことだ!!」
 「うわあああ!!」

屈強そうな男たちがそんな子供みたいな悲鳴を上げて、やれ先にと救命ボートに乗り始める。二度と来るかなんて野次を飛ばす客もいた。そうして残ったのはケロリとしていた私達四人だけだった。
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