第1章 彼女の憂鬱
「…き、ゆき、雪」
『……んん』
重い瞼を開くと、そこには見慣れた男の顔があった。
男の後ろの窓から差し込む夏の朝日に、雪は思わず目を細めた。
『…俊くん、おはよぉ』
「おはよう、雪」
男は優しく微笑みながらそう言った。
いかにも高そうなスーツに身を包んでいるこの男は、大学のサークルのOBで、知り合いの紹介で知り合った。
二人の関係は友達以上恋人未満、言わゆるセフレというやつだ。
雪がベッドから身体を起こすと、彼女の白い肌があらわになった。
首から腰にかけて並ぶ赤い斑点は彼女の白肌をより一層際立たせている。
『俊くん、朝早いねぇ』
「もう7時だよ」
『まだ7時だよー』
「…はぁ、いいから早くシャワー浴びてきな」
『はーい』
雪は迷うことなく風呂場へと進んでいった。
数ヶ月前から毎週通い続けているため、無駄に広いこの部屋にもすっかり慣れてしまった。