【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第11章 5ヶ月後
「一体何のことだ、アンダーソン」
ポーラの目にたちまち涙が溢れて来た。
「兵長は、一度も名を呼んでくださらなかったですね」
「名前…?」
「兵長が誰か女性を愛するときには、きっと最初から無理やり身体を奪おうなんて気にはならない筈です。
名前をたくさん呼んで、愛してるって口付けるんです。
私は…そうしてもらえる資格もなかった」
涙は頬を伝って、唇を、襟元を静かに濡らす。
こんなポーラの表情を見るのは初めてだ。
「私の心は私のものだと強がっていましたが、心すらもとっくに貴方に捧げていました。
でも、もうそれも終わりです。
こんな間違った関係では、貴方も私も傷ついて終わってしまう」
言葉にするのも辛いのか、涙まじりの声は投げ捨てるように吐き出されている。
「リヴァイ兵長。どうか別の人と幸せになってください。
そうしたら私もきっと、別の誰かと歩んでいけます」
「何が幸せになる、だ。
俺たちは調査兵団だ。
俺もお前も他人と乳繰り合って番う前に、巨人に喰われて死ぬんだ」
「そうです。戦って死ぬんです。
明日壁が破られて、死ぬかもしれない。
でもだからこそ…死ぬまでの僅かな時間でも、貴方に幸せになってほしいと願うことは、愚かなことですか?
死ぬときはきっと一人でしょう。
でも人は、一人だけでは生きていけません。
誰かを愛してください。
貴方の背負うものは、貴方一人には重すぎる。
そして勝手を言いますが、兵長の元から去ることをお許しください」
「お前…」
次々とポーラの口から予想外の言葉が出て来て、頭が真っ白になって何も言葉を紡げない。
ポーラはいつの間にか敬礼のポーズを取っていた。
「憧れの貴方のそばにいれて、幸せでした」
ありがとうございました、そう言いながらポーラは、踵を返して俺の元から走り去ってしまった。