【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第11章 5ヶ月後
立体機動装置とは長い付き合いだ。
地下にいた頃、間抜けな兵士から奪って見様見真似で使い始めた。
最初はアンカーの挿し方が甘く転落したり、飛ぶ方向を誤って壁に激突したりしていた。
それでも一緒に地下でつるんでいたファーランやイザベルと比べても、自分の立体機動装置の扱いはかなりのスピードで上達して行ったように思う。
飛ぶのは得意だ。
誰よりも早く、誰よりも複雑に飛べる自信がある。
故に「人類最強」と呼ばれるに至ったのだろう。
木々の間を縫うように飛ぶ。
今日の飛行訓練は各々の立体機動装置の稼動テストの意味も含まれていた。
兵団の敷地内にある飛行訓練場は、小高い樹々に覆われていて昼間でも鬱蒼としている。
時たま現れる巨人を模した木の板は多くの兵士からの刀傷を浴びてボロボロだ。
ベテラン兵士が新兵に向かって、飛び方の指導をする声が聞こえる。
自分も指導する立場の人間だが、特に声をあげようとも思わなかった。
飛び方なんざ、体で覚えるのが一番早い。
あれからポーラに会っていない。
最後に敬礼して行ったその姿を思い出す。
『心は重たいからいらないと兵長は仰いました。それなら私は、いつか心まで大事にしてくれる人と出逢えることを待つのみです』
ポーラの言葉がぐわんぐわんと頭の中で響く。
自分は傷ついているのだろうか?
何故自分はポーラにあんな言葉しか言えない?
考えを振り払うかのように飛ぶスピードを上げる。
立体機動に慣れたベテラン兵士が見たら「ガスを吹かしすぎている」と顔をしかめるだろう。
でも俺にいちいち飛び方を意見してくるやつなんかいやしない。
いたとしてもエルヴィンくらいだ。