【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第9章 4ヶ月後より前の話
夜の街を、ディモとフレーゲル、2人の親子が並んで歩いている。
ポーラを兵舎まで送り、門番に口止めの現金と、ポーラの無断外出を不問にするよう一筆書いたメモ切れを握らせたあとの帰り道だ。
別れ際のポーラは、礼の言葉こそ口にはしていたが、人形のように色のない表情をしていた。
命をかけて壁外で戦う兵士である彼女が、きっと支えにしてたであろう恋心を失うというのはどれほど惨いことなのだろうか。
ディモとフレーゲルには計り知ることができなかった。
「なあ親父…」
「うん?」
「ほんとにあの子は、好きな人とは幸せになれないのかな?
親父の言う通り、本当に別れるしかないのかな?」
「あのな、フレーゲル。あのお嬢さんに言ってないことがある」
「え」
「確かに、身体の関係になってしまった男と女ってのは、なかなか一緒にはなれねえもんだ。
そういう場合、男は簡単に手に入れることができた女のことを見下している。
男はな、自分が尊敬する女でないと心から惚れることはないんだよ。
一度見下された女はダメだ。
だがな、そんな男を女が見返してやれる方法が一つだけある。
女の方から身を引いて、新しい恋をすることだ。
男は自分から離れた女のことが、どうにも気になるものらしいな。狩りの習性とでも言うか…去る者をまた追いかけてしまうんだ。
特に、自分のモノだと思ってた女が別の男に恋をしてみろ。男は面白いほどに振り向かせるのに躍起になる。」
「それじゃあ、親父は…」
「こんなお節介、焼くつもりじゃあなかったんだがな。俺も歳食っちまったな」
親子の会話が、夜空に溶けていく。