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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完


物心がついた頃には楽器は生活の一部になっていた。
父と母は仲が良く、姉妹間の仲も決して悪くなかった。
だから母が亡くなったのは衝撃だった。
死因は 首吊り。自殺したのだ、母は。
明るい母だと思っていたが、実際は違う。家族には隠していたがうつ病を患っていて多くの薬を飲んでいたと知ったのは母が亡くなってからだった。
遺書は無かった。
ただ、店の経営が苦しいことだけはわかっていた。
父に経営の才能はない。自分にもあるかわからないが、高校に通う学費はない。
妹達にせめて不自由のない学校生活をと私は高校を中退し店を継ぐことにした。
店の立て直しなんて、口では簡単に言えるがそう簡単なことじゃない。数年かかってやっとなんとか普通に経営できるようになった程度だ。
それでも、才能のあった末の妹は中等部まで聖MIDI女学院に通わせることができたし、次女もなんとか高校を卒業させることができた。
妹達の面倒を見ながら働くのは、正直大変で……唯一、バンドだけが私の心の拠り所だった。
みんなでバンドして、青春して、少し恋なんかして……仲間といる時だけ私は私だけの自分でいられたんだ。
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