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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完





ビルボードを見上げると、彼女の新曲が載っていた。
隣に映る映像はあのバンドで。
あの店のコーヒーの味が口の中に広がるようで顔を顰めた。







「あんた達に対バンを申し込む」






独断で決めたことだった。その足で事務所に戻りオリオンに報告すると、怒ったような困ったような顔をした。
「勝ち目はないぞチタン。あの曲は異様だ」
そう言われるものの、既に売った喧嘩だ。取り下げるわけにはいかない。
そう答えるとオリオンは呆れたようにため息を吐いて俺の前に紙を叩きつけた。
「チタン、冷静になれ。チタンらしくないぞ」
紙を手に取ると、その内容に驚いた。
「ーーーっ」
「後をつけられてたみたいだな。チタン、バイトのことに関してあまり首を突っ込みたい訳じゃない。ただ」
大手出版社の名が書かれた、事実確認のFAX。
ーーー俺とヒロインさんの関係について聞かれていた。
「印刷所と出版社に金を渡して揉み消した。けどなチタン、この情報を売ったのはーーーあのバンドだ」
息を呑む。
「チタンお前今日のライブ…あのバンドの新曲を聞いてから随分と変だぞ。演奏もお前らしくない荒々しいものだったし……何か関係でもあるのか?」
オリオンに指摘され、思わず目を逸らすと再び大きなため息を吐かれた。
「………………新曲を書け、チタン」
「それはーーー」
新曲、そう、新曲だ。
あの曲に勝つ為に、新曲を書かなければ。
「ーーーわかった」
もう一度ため息を吐かれると、今度はオリオンは笑い始めた。
「……それにしてもお前がそんなに取り乱すほどの女性というのは……一度会ってみたいものだな」
「なっ」
顔が熱くなっていく。
「ただなチタン、わかっていると思うが俺たちの仕事は人気商売でもある。特に恋愛はNGだ………だから、バレないようにやってくれ」
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