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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完


3人がかなりの量のお土産を俺に持たせる。
家まで送ろうとするオリオンをなんとか断り、それでもとタクシーに無理やり押し込まれると多めの金を運転手に握らされ俺は思わず苦い顔をした。
「またなチタン、明日はオフだしゆっくりしろよ」
「ああ、ありがとう」
オリオンは金のない俺を随分と気にかけてくれている。
運転手に行き先だけ告げると、無口なその人はゆっくりとアクセルを踏んだ。
繁華街のネオンが差し込む。
外には夜の帳が下り、夢見る若者達が音を響かせる。
車内は何もかけられてなくて、時折入る無線のノイズ音がやけに心地よく感じた。

どれほど走ったのだろう、アンダーノースザワの見慣れた風景にどこか懐かしい雰囲気を感じ取ると、よく見慣れたタンクトップと左肩のタトゥーがいた気がした。
「すいません、ここでおります」
ダサいメガネをかけ、お土産を抱えて降りる。
辺りを見回すとすぐにその人が目に入り、俺は近付いた。
「ヒロインさん」
「おお、帰ってきてたんだ、お疲れ」
少し驚いた様子でヒロインさんが俺を見る。
整った顔をしている、と思うとヒロインさんは突然手を出してきた。
「え?」
「ほら、そんなに荷物持って。少し持つよ」
そう言うヒロインさんの肩には恐らく晩御飯の材料であろうネギが飛び出たエコバックがかかっている。
「流石にそれは」
「いいから」
俺の左手の紙袋が奪われる。
肩に食い込んだエコバックの紐が生々しい痕をつけるが、ヒロインさんはそんなこと気にしてないようでとりあえず家(店)に行こうかと先を歩いた。
「今回ピアノの調律どうだった?」
「かなりよかったです。ヒロインさんがメインで?」
「仕上げだけだよ。チタンくんがオーケー出してくれたし、あの子の力になってくれて助かったよ」
いつも不機嫌そうな店の子の顔を思い出す。
「じゃあ、今日はうちで食べていきなよ。どっちにせよバルトくんとニケルくんと一緒に帰るようになるし」
「それは」
「材料買っちゃったし。でももう一件寄らせて。玉子が安いんだ」
目の前を歩くカップルが仲睦まじく手を繋ぐ。
繁華街へ入っていく2人とは別に、俺たちは24時間スーパーへと歩みを進めた。
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