第1章 チタンパート 完
ライブが終わりオリオンの自家用ジェットに乗り込む。
注がれたシャンパンのグラスを傾けると、きめ細かい泡が弾ける音が聞こえた。
「今回のライブも最高だったな。一般大衆ジュエリーも、黄金アーティファクトたちも随分と沸いていた」
オリオンが満足そうに琥珀色の液体を口に含む。
「新曲のお披露目も大成功だったね!」
「ジュダさんのあの満足そうな顔見たかよ!?流石チタンだなぁ!」
セレンとアルゴンにも賞賛の声を送られると、俺は思わず苦笑いした。
「俺だけの力じゃない」
そう、俺だけの力じゃない。
オリオンのヴァイオリン、セレンのベース、アルゴンのドラム、そして俺のピアノが美しく調和して完成された曲だ。
そう思っているとセレンは少し不思議そうな顔をして俺を見つめた。
「チタン……少し雰囲気が変わった?」
「?」
「なんだか優しくなったよね。前からファンの子達には気高いって言われてたけど、最近は気高い中でも柔らかく笑った顔とかにときめいちゃうって」
「……前から言ってるが、俺たちはアーティストだ。アイドルじゃない」
思ったよりも低い声でそう返すと、セレンは呆れたようにあーはいはいと笑った。
「そういえば今度のライブの前座、前にチタンが気にしてたバンドだって」
「へえ、なんでまた」
アルゴンが不思議そうに言う。俺も不思議に思い同じくオリオンに視線を向けた。
「向こうも技術は一流だ、前座として不足はない。それにチタンが気にするほどのバンドだし実力も気になるだろう?」
オリオンが不敵な笑みを作ると何とも言い難い気持ちになる。
なんだか少し気まずい気がして目を伏せると、ふいにヒロインさんの肩のタトゥーと少し困ったような笑顔が脳裏をよぎった。
今回は少し長い休みを貰ってしまった。
ヒロインさんがバルトとニケルを預かると言ってくれたおかげで2人にはそこまで寂しい思いをさせずに済んだが、ヒロインさんには沢山の迷惑をかけてしまってる。
「どうした、チタン」
「何か、買って帰ろうかと思ってな」
弟達にかと3人が勝手に納得すると、セレンがじゃあ僕はと話しだす。
この3人にも随分と世話になってると思い、静かに飛ぶジェットの中ゆっくりと目を伏せると、3人の声が遠ざかっていくような気がした。