第8章 絶望前夜
私はゼノ様に抱く感情を消し去りたい……
その為にウィスタリアに留まる事を決めたのに……
ゼノ様は私の心を乱してくる……
ユーリと幸せになって欲しいって…言ってたのに…
何で今……私を抱いたの…
虚しい気持ちが心を支配した
私は制服を着直し宣言式の準備に向かった
ホールに出るとプリンセスに付き添うユーリを見つけた
高いヒールを履くプリンセスの手をとり
ユーリとプリンセスは楽しそうに笑っていた
プリンセスと上手くやってるんだな…
執事だし…当然か……
けれど…
私は焦燥感に駆られた
何で…
何でユーリはあんなに楽しそうなの?
明日から
暫く、もしかしたら一生私と会えなくなるかもしれないのに
悲しくないの…?
ユーリも…
ゼノ様も…
私の大好きな人はプリンセスに奪われていくの……
辛い……
今までしてきた事を後悔しながら
私はぼーっと二人を見つめていた
コツっ
「何ぼーっとしてんだよ」
頭を小突かれ振り向くとアランが立っていた
「アラン…」
「この忙しさも…明日までだな…」
「そうだね…」
明日の宣言式後プリンセスはシュタインへ向かう事になる
そしたらシュタインの騎士団が業務を引き継ぐ為私たちには束の間の休暇が与えられる
「休暇中…何処か行きたい所はあるか?」
「うーん……考えとく」
「わかった」
アランは優しい笑みを浮かべると
私の頭にポンっと手を乗せ歩いて行った
あ…
そのとき
ふとユーリと目が合った…
すぐにお互い目を逸らし業務に戻った
ユーリ…
今の見てたかな…
ユーリもプリンセスと楽しそうにしてたし
別に関係無いよね……