第19章 昔の記憶
杏「藤の花の家紋の家という鬼殺隊を援助してくれる一族がいるが、まだ幼い君には難しいだろう。」
「鬼殺隊?」
杏「うむ。俺は鬼を狩る組織、鬼殺隊の一員だ。」
「では!」
菫が食い気味に声を上げて目を輝かせると杏寿郎は少し困ったような顔をした。
杏「君の気持ちを否定はしないが、良い師範を見付けないと危険だ。」
そう言う杏寿郎の視線は菫の細い腕に向いていた。
「師範…。」
杏「うむ。俺が探して便りを送ろう。それまでは夜に出歩いて鬼を退治しようとしてはならないぞ。」
菫は杏寿郎の言うことに素直に頷くと、懐紙に実家の住所を書いて杏寿郎に手渡した。
杏「うむ!では、俺はそろそろ失礼する!」
杏寿郎がそう言って立ち上がると一羽の鴉が飛んできて杏寿郎の肩に止まった。
「……わあ。」
杏「俺の鎹鴉の要だ!」
杏寿郎がにこっと笑うと要は『カァ!』と一鳴きする。
すると静かに寝ていた妹が起きてしまった。
要「近クニ藤ノ花ノ家ガアル!カァ!」
妹「……え、」
妹は喋る鴉を見て目を輝かせた。
質問の嵐が来そうだと感じた杏寿郎は笑顔を浮かべながらパッと背を向ける。
杏「では!片倉姉、片倉妹!俺はこれで失礼する!!握り飯をありがとう!!」
「え、私の名前は、」
菫はそう言い掛けたが、杏寿郎はあっという間に走り去ってしまった。
「そう言えば名乗っていなかった…。片倉さんってどなただろう…。」
妹「ねぇ、お姉様!あのカラスは何なのですか?お喋りしました!」
菫は興奮した様子の妹に微笑みかける。
「鬼殺隊の煉獄杏寿郎様の鎹鴉、要さんよ。」