第63章 受け継がれる命
『…………………………。』
菫は気が付いたら見知らぬ地に立っていた。
一面に赤い彼岸花が咲いている。
『以前見た青い彼岸花も綺麗だったけれど、これも綺麗…。』
そして、川の向こうに美しい女性を見た。
菫は彼女を知っていた。
毎日、何度も何度も彼女の前で手を合わせた。
『瑠火さん…。』
菫が呼ぶと凛とした彼女は優しく微笑んだ。
菫は彼女が今どこに居るのかを忘れて近寄ろうとした。
瑠火はただ首を横に振る。
それでも近付き川へ入ろうとすると植物が絡まって菫の足を止めた。
瑠『貴女はまだ此方に来てはなりません。貴女は子供が大きくなるまで見届けて下さい。…私の分も。』
そう言われて菫は今の状況を理解した。
『…きっと杏寿郎さんが心配しているわ……。』
菫が藻掻くのを止めると植物もスルスルと菫の体から離れていく。
『お任せ下さい。お会い出来てよかった…。お義母様の優しい笑顔を見れて良かったです。』
その言葉に瑠火は再び嬉しそうに微笑んだ。
それと共に足元が崩れていくような感覚を覚えた。
瑠『それから―――…、』