第63章 受け継がれる命
杏「菫!!!」
菫がうっすらと瞼を上げると、顔を覗き込んでいた杏寿郎がすぐに抱き着いた。
一瞬でよく見えなかったが顔色が酷く悪かったように思えた。
「もう大丈夫です。」
杏寿郎の背を撫でながら上体を起こそうとすると同じく側に居た槇寿郎と千寿郎が止める。
「瑠火さんにお会いしました。」
菫の穏やかな笑みを見た三人は安堵と共に興味を惹かれた顔をした。
少しして菫が本当に落ち着いたのだと納得した三人は菫の話を聞く事にした。
「言伝を預かっています。まず千寿郎さん。」
千寿郎は期待に目を輝かせている。
「『成長を見てあげられなくてごめんなさい。優しい子に育ってくれて嬉しく思います。』」
千「……母上が…嬉しく…、」
千寿郎がそう呟くと菫は微笑んでから杏寿郎に視線を移した。
「次は杏寿郎さん。『よくやり遂げました。貴方を誇りに思います。』………。」
―――『菫さんを大切にしなさい。彼女の隣は貴方が本当に羽根を休められる唯一の場所となります。』
言葉はそう続いていたが、菫は口に出来なかった。