第62章 ※遠い初めての夜
音の出処は菫の下腹部からだ。
杏寿郎の吐き出した物が自身の中から流れ出ている感覚があった菫は赤面した。
杏「ああ、全部出てきてしまったか。」
杏寿郎が体を離し、何気無くそう言って新しいちり紙を当てると、菫は粗相をしたように感じて更に頬を熱くさせた。
「すみません…。」
杏「仕方のない事だろう。また注げば良い話だ。」
その返事を聞いて、菫は杏寿郎が子供の事を考えて言っているのだと悟った。
「…瞳と髪の色は煉獄家の色になるのでしょうか。」
菫も二人の子供に想いを馳せると、杏寿郎は手拭いを絞りながら微笑む。
杏「ああ。煉獄家の嫁には身篭っている間、定期的に観篝をしてもらう。大篝火を観るんだ。それでこの髪と瞳の子が産まれる。」
「観篝…。」
菫が特別な色の髪を慈しむように撫でると、杏寿郎は初めて出会った時に髪色を褒めてくれた事を思い出しながら菫の白く濡れた太腿を拭いた。
「…っ」
杏「すまない。声を掛けるべきだったな。」
菫はすぐに首を横に振って『ありがとうございます。』と礼を言うと、何もかもしてくれる優しい杏寿郎を改めて見つめた。