第62章 ※遠い初めての夜
「これは普通の事です。初めての時は必ず血が出ます。辛いのも初めだけだと聞いています。」
それを聞いた杏寿郎の眉尻が下がる。
杏「…だが酷い量だ。裂けた可能性もあるだろう。」
比じゃない程の血を流してきた杏寿郎が、早くも止まってきた血を見てそんな事を言う。
菫は思わず微笑んでしまった。
「いえ、紛れもなく只々私が純潔であったという証です。受け取って下さいませ。それとも杏寿郎さんは既に失っていた方が好ましかったのでしょうか。」
菫がわざとふざけたようにそう問うと、杏寿郎はやっと肩の力を抜く。
杏「…いや、嬉しく思う。」
そう言って杏寿郎は菫から手拭いを受け取る。
そして菫が押さえていたちり紙を退かす様を見つめた。
杏「…確かに血が止まっているな。本当に良かった。」
そう安堵した声色で言いながら手拭いを桶の水に浸し、固く絞ると菫の太腿についた血を丁寧に拭っていく。