第62章 ※遠い初めての夜
杏寿郎はあれだけ抵抗していた菫が喋らなくなった上に様子がおかしくなってしまった為、心配する気持ちが勝って腰を止めていたのだ。
そして、眉尻を下げながら顔を覗き込んで菫の頬に手を当てていた。
杏「…大丈夫か。自制が出来ず本当にすまない。」
菫は荒い呼吸を繰り返しながらもなんとか首を横に振った。
「…杏寿郎さんは、悪くありません……。」
そうは言っても激痛を味わった菫の目からは涙が溢れ落ちた。
杏(泣かせてまでは…、)
涙を見た杏寿郎は『今日はここまでにしよう』と決め、自身をゆっくりと引き抜いた。
そして、ぬるりとした感触を覚えた。
杏「………………。」
その正体を確認した杏寿郎の心臓が跳ねる。
菫の中から出てきた "それ" が血だったからだ。