第62章 ※遠い初めての夜
杏「本当にすまない。君の気持ちを置いてきぼりにしてしまった。泣かないでくれ。」
杏寿郎の胸に顔を埋めた菫は『杏寿郎さんは悪くありません。』と首を振る。
それでも小さな体は震えていた。
杏寿郎はそれを止めてあげたくて優しく何度も背を撫でた。
杏「今日はここまでにしよう。ここまでにして、手を繋いで寝よう。」
そう言うと漸く菫の体からふっと力が抜けた。
―――
菫が安心した様な顔で眠りに就くと、杏寿郎はその頬をそっと撫でた。
杏(…体の反応だけで喜んでくれているのだと判断していた。もしや、菫は本来こういった行為が好きではないのだろうか。)
独り言を溢してしまった事に気が付いていなかった杏寿郎は、そんな事を思いながら眉尻を下げたのだった。