第60章 初めての宴
杏「菫!胡蝶、どうして応対して、」
「お二人がご結婚なさいました!」
菫が輝く笑顔でそう告げると杏寿郎もパッと明るい笑顔を浮かべる。
杏「そうか!!いきなりで驚いたがそれは目出度いな!!早く上がってくれ!皆に報告だ!!」
菫としのぶは微笑み合うと一先ず二人を広間の皆に預け、炊事場へと向かった。
し「おめでたい報せが続きますね。」
「ええ。しのぶさんはどうなの?…その、冨岡さんと噂になった事があったと思うのだけど…。」
しのぶはその言葉に笑顔のまま固まる。
菫は炊事場に入りながらそんなしのぶをちらりと見ると追求を止めた。
「しのぶさんは可愛らしいだけでなくしっかりしていらっしゃるから、きっと素敵な奥さんになるわ。」
そう言って菫が煮込んだ大根が入った鍋に鰤を入れようとすると、しのぶはハッとした。
し「鰤大根ですか…?」
「…ええ。」
菫の返しを聞くと眉を寄せ、居心地悪そうに視線を横に遣る。
し「……鮭はありませんか…?その…、鮭大根も美味しいと思うんです…。」
その言葉の意味を知らない菫は少し首を傾げながらも頷いた。