第59章 それぞれの
重「それでこの一週間空けておいてくれと言ったのか。随分と無理をした。だがお前が連れて行って貰いたい場所でもあるのかと思ったから…、」
重國はそう言い掛けた所で少し固まる。
そして『…間違ってはいないが。』と呟いて口を閉じてしまった。
重國が想像した "連れて行って貰いたい場所" とは勿論観光に向いた土地の事であって、親戚の家なんかではない。
だが、菫はその違いを理解してくれない気がしたのだ。
しかし――、
「そういった希望もあります。親戚の家を回る日程とその近くの名所を纏めましたので、こちらをご一読ください。」
菫はそう言うと立ち上がって空いている席に置いてあった物を手に取り、所謂手作りの旅のしおりを重國と晴美に手渡した。
蓮「お姉様、私の分は…?」
そう問われると菫は微笑みながら再び例の席へ戻り、桜色の台紙で挟んだ特別製のしおりを取り出した。
蓮「わあ!可愛い!」
「蓮華のしおりにはきちんとお稽古の時間も書いてあるわ。」
菫はそう蓮華のテンションが下がる余計な事を言いながら頁を捲った。