第58章 休養―其の弐
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(……温かい。)
菫はぼんやりと覚醒すると視線の先で眠っている杏寿郎を見つめた。
そして、状況を理解した。
(蟲柱様が手伝って下さったのかしら。それとも…、杏寿郎さんお一人で…?)
菫は手首まで巻かれている包帯を見て眉尻を下げた。
(お詫びにお食事を…、)
そう思ってベッドとベッドの間に足を下ろすも今度は杏寿郎が手を離さない。
そーっと指を剥がそうとしてもびくともしない。
菫は暫く困った顔をして立ち尽くしていたが、昨夜無理をした足にビキッと痛みが走るとベッドに腰掛けた。
(親分にも蟲柱様にも改めてお礼を言わなくちゃ…。足が痛む程度で済んだのだから…。)
そう思いながら再び袖からちらりと見える手首の包帯を見つめる。
恐らく体中に巻かれているのだろうと思うと心臓がぎゅっと掴まれたように痛くなった。