第58章 休養―其の弐
杏(………。)
杏寿郎は手を離さない菫を見下ろして眉尻を下げた。
杏(結局起こすことになってしまったな。)
そう思いながら菫の肩を揺すろうとした時、ピタッと動きを止める。
そして自身のベッドを見た。
両の腕を目一杯広げればそれに手は届く。
杏(完全にくっつけなければ…。)
そう思いながら自身のベッドを引き寄せる。
少し余分に近寄せてしまった気はしたが、手を繋いだまま寝られる環境が整うと、杏寿郎は満足そうにベッドへ上がった。
杏(俺達はよく手を繋いで寝るな。夫婦になってからもそうしてくれるだろうか。)
そう思いながら怪我を気にせずに横向きに横たわる。
杏(俺達は本当に夫婦になれるのだな。それも皆に認められた中で。二十歳のうちに父上と酒を飲む事も出来るのだろう。あまり構ってやれなかった千寿郎の話もこれからは十分聞いてやれる。)