第49章 進めたい関係
普段は任務か見廻りがある上に継子もいる為、この早い時間に二人切りというシチュエーションは非常に珍しい。
加えて菫は杏寿郎を出迎えて食事や風呂の世話をしたら寝てしまう。
つまり、この時間に菫と忙しくない二人切りの時間を過ごせたのは今日が初めてであった。
そして、明るい時間に二人切りになれば大きな幸福感を得られるが、暗い時間、それも部屋に二人切りの今はそれだけではない。
その為に杏寿郎は欲張りになりそうな自身と戦っていた。
「……。」
一方、菫は見上げた先の杏寿郎が自身の唇をちらりと見た事に気が付いてしまっていた。
だが杏寿郎の自制心は人一倍強い。
宣言した以上、そこには手出しをして来ないと菫は確信していた。
だからこそ、『望むことをしてあげて喜ばせたい』という姉心が擽られた。
「…………したいですか…?」
菫がそう首を傾げると、杏寿郎は口角を上げたまま固まる。