第13章 探り
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杏「よもや!!」
一時間後に帰ってきた杏寿郎は、玄関まで届いた良い匂いに嬉しそうな声を上げた。
「お帰りなさいませ。お風呂も沸いておりますが如何致しますか。」
杏「うむ、只今帰った!それでは先に風呂を頂こう。それよりも君は未来を見通せる力でもあるのだろうか!今夜は特別早かった筈だが!」
「たまたまで御座います。」
杏寿郎はそんな返しをされても愉快そうににこにことしながら玄関に上がり、炎柱の羽織りを脱いだ。
杏「すまない、今夜は少々汚してしまった。宜しく頼む。」
「畏まりました。」
羽織りを持った菫の手が震える。
その羽織りが特別な意味を持つ事を教えてもらったからだ。
それ故に持たせて貰う度、菫はいちいち感激していた。
杏寿郎は変わらないその反応を見て口角をきゅっと上げる。