第12章 二度目の邂逅
杏寿郎は自身に動揺した様子を見ても何とも無さそうに微笑んでいたが、その仕草には眉を寄せた。
その顔に笑みはもう無い。
杏「怪我をしているのか。見せてくれ。」
菫は杏寿郎が近寄ってくると、『醜い自身を見られてしまう。』という恐怖のような感情を抱いた。
「お待ち下さい!!」
怯えるような声色に杏寿郎の足が止まる。
「あ…、今のは、その、」
菫はらしくない自身の感情に戸惑いながら言い淀んだ。
杏寿郎は大きな目でその様子を観察すると、安心させるように柔らかい笑みを浮かべた。
杏「また怖がらせてしまったな。だが安心してくれ!俺は怪しい者ではない!少なくとも、」
そう言いながら杏寿郎は自身の頬を指差す。
杏「俺は君を殴ったりはしない。おいで、手当てをしよう。」
菫は杏寿郎の柔らかく温かい声に導かれてゆっくりと側へ寄った。
そして恐る恐る荷物を下ろす。
杏寿郎は明らかに力の強い男に殴られたであろう頬を見て眉を寄せた。