第11章 薬草を届ける日
「待って下さい。お外で話しましょう。」
菫は病室に目配せをすると頷いた圭太と共に外へ出た。
圭「お前…、それ退かしてみろ。」
菫が杉本に捕まった様子を見てから心配していた圭太は、今は涙目になっている。
菫は圭太が引き下がらないであろう事を悟るとすぐに荷物を下げた。
圭「……今日が初めてだよな…?」
いつも堂々としている菫が視線を横へ逸らすと圭太は顔を歪めて俯いた。
圭「言ってくれよ…仲間だろ…。」
菫は視線を戻すと申し訳無さそうに眉尻を垂れた。
「大切だから巻き込みたくなかった。掛替の無い仲間だとは思っています。」
圭「お前なあ…、お前……、」
圭太は菫の珍しい表情を見ると涙を溢した。
圭「…蟲柱様にお伝えしよう。余りにも酷いだろ。顔を殴るなんて…女なのに…。」
「待って。私すぐに炎柱様の屋敷へ帰らなければならないんです。それに杉本様は優秀な剣士です。この事が公になって除隊になれば鬼殺隊にとって痛手になります。」
それを聞いた圭太は口を開けて固まった。
圭「……お前…こんな時まで何言ってんだよ…。殴られたの顔だけじゃないんだろ…こんな…、ここまでされてまだ炎柱様、杉本様って…、」
菫は圭太の優しい気持ちを有難く思っていた。
それでも何よりも杏寿郎が一等大事なのだ。
それ故に弱っている圭太に挨拶をするようにパッと頭を下げると無情にもそのまま門の外へ出た。
勿論圭太はその後を追った。
しかしどこを痛めつけられたのか分からなかった為、腕を掴むことも出来なかった。
圭「なあ!頼むから…、」
「検討します。それまでは待っていて下さい。」
圭太は揺るがない菫の凛とした表情を確認すると、眉尻を下げながらとうとう立ち止まってしまった。