第42章 恋仲
―――コンコンッ
し「いい加減にして頂けますかー?」
杏寿郎が言った通り病室前にしのぶが訪れると天元は不服そうな顔をしながらも引き下がり、杏寿郎は実弥に礼を言って見送った。
杏「時透!大した情報をあげられなくてすまなかった!任務が一緒になった時は宜しく頼む! "柱として共に頑張ろう" !!」
それは記憶障害のある無一郎に杏寿郎が何度も掛けている言葉だった。
しかし無一郎の反応は変わらない。
無「そう指令がきたなら、そうするしかないでしょ。」
ただそう言って病室を出て行ってしまった。
杏寿郎はそんな無一郎を見送ると、笑みを浮かべて腕を組みながら『むぅ!』と少しだけ悔しそうな声を出した。
一方、菫は詰めていた息を吐き出すと思わずベッドへ倒れ込んでしまった。
その無防備で気を許した態度に杏寿郎は声を上げて笑う。
菫は笑われて初めて自身が礼を欠いた事をしたのだと気が付いた。
「す、すみませ、」
杏「寝ていてくれ!ここは病室だ。その姿勢が一番正しい。」
その声は柔らかく、菫は頬が熱を持ちそうになると両手で顔を覆った。
「……お言葉に甘えさせて頂きます。」
杏「うむ!俺もそろそろ寝るとしよう!!」