第33章 誕生祝い
そして――、誕生日当日。
日付けが変わってから帰宅すると、杏寿郎は出迎えに来た菫を片腕ですぐに抱き締めた。
「あ……あの……、」
杏「今日は君の誕生日だろう!一番初めに祝えて嬉しく思う!!」
杏寿郎の声がまるで祝われている立場なのかと思ってしまう程に幸せそうであったので、菫は思わず笑ってしまった。
杏寿郎はそんな菫の笑い声を聞くと、微笑みながら首を傾げた。
杏「初めに花を贈らせてくれ!君にすぐ生けて貰わないとしおれてしまいそうだ!!半日以上蝶屋敷に預けていたのでな!」
「花…?」
体を離して杏寿郎を見つめると、杏寿郎は後ろ手に持っていた紫色の花束を菫に見せた。
「誕生花…。」
杏「うむ!浦菊だ!!」
菫は礼を言って受け取ると、顔を近付けて香りを嗅いだ。
(別名、浜紫苑…。花言葉は、『追憶』、『君を忘れない』。)
何かを忘れてしまっているような気がしている菫は、その花言葉を深読みしそうになって頭を振った。
「綺麗な色です。…とても嬉しいです。」
そう言って菫がはにかんで微笑むと杏寿郎も嬉しそうにきゅっと口角を上げた。