第32章 五年前の真実
杏「俺から話しましょうか。」
仕事が忙しそうな重國にそう提案してみた。
すると重國は少し動揺した後、頷いて『すまない。』と言った。
重「晴美、君も他人事ではないので彼から説明を受けてくれ。蓮華も同席して欲しい。彼の言う事は信じ難いかもしれないが全て真実だ。」
晴「……え…………?」
重「杏寿郎さん、また会いに来てくれ。まだ話す事がある。」
重國は告げる事だけ告げると、杏寿郎の "屋敷に二人切り発言" についてはコメントしないまま、晴美を軽く抱き締めて退室した。
晴美は首を傾げながら杏寿郎の前に座る。
杏「まず、自己紹介をさせて下さい。」
杏寿郎はそう切り出し、菫が今自身と共に居る事、菫と清水家に固執していた鬼の事、それが菫が失踪した原因だと思われる事、鬼の計画が失敗に終わった事、そして菫を嫁に貰いたいと考えている事まで全てを話した。
当然晴美は呆然とした。
蓮「全てお父様とお話しになられた事と同じです。今の話は事実ですわ。」
蓮華がトドメを刺すと、晴美は泣きだしてしまった。
晴「色々と思うことはあるけれど、何よりも菫が今無事で本当に良かった……。」
蓮「……お母様…。」
蓮華はそんな母親の手を握ってもらい泣きしてしまった。
杏寿郎は泣く二人を見つめると、どうしたものかと思いながら腕を組んだ。