第32章 五年前の真実

蓮華は杏寿郎の瞳に気が付くと我に返り拳を握った。


蓮「お、お姉様は家族を守ろうとして下さったのかもしれませんわ…。此処へ戻れば鬼が来ると分かっていらっしゃるのよ。……そうなのでしょう…？」


そう訊かれて杏寿郎は優しく微笑んだ。


杏「そうだとしたら無意識下だろうが、菫さんならあり得るな。」


そうして蓮華に微笑んでいると重國の視線が突き刺さる。


話は一段落ついた。

話題が変わる時だ。


杏寿郎は重國が『もう鬼は出ないので菫を返して欲しい。』と言うのだろうと思った。


しかし――、



重「杏寿郎さん、菫を守ってやって下さい。」



その言葉に杏寿郎は一瞬固まった。


杏「…どういう意図でしょうか。」


蓮華も予想外の言葉に固まっていた。

重國はそんな二人に見つめられながら再び視線を手元に落とした。