第32章 五年前の真実
蓮「な、なぜ…どうしてなんです…?」
杏寿郎も重國の言葉を待った。
二人の視線を浴びながら重國は顔を上げる。
重「ああ、訳は鬼が話した。話すのが好きなのかぺらぺらと訊いてない事まで…。」
そう言うと指を絡めて握った。
重「…まず、方法は分からないが菫を家から抜け出させた。その後、鬼の筋書きではあの子は此処へ戻って来る筈だったらしい。」
重國は一旦言葉を切ると眉を寄せる。
そして、思い切ったように息を吸った。
重「……そうなったら菫の目の前で私達を殺すことが目的だったのだと言っていた。正確には、あの子が自責するような方法で殺し、あの子の絶望する顔を見る事が目的だったと言っていた。」
蓮華は両手で口を覆って小さく震えていた。
杏寿郎の表情は変わらず静かで感情がよく読めない。
重國はそんな二人を一瞥すると手元に視線を落とした。
重「……だがあの子はどういう訳か戻って来なかった。鬼の筋書き通りに動かなかった。すると面白くなくなって私達に手を出そうとしてきたんだ。そうしたとしても隊士になっておきながら私達を救えなかった菫は絶望するだろうと。」
一通り聞き終えると杏寿郎はまず蓮華を見つめた。