第30章 三人の新人
天「それよりもよ、早くも隊士から慕われてる "清く尊い炎柱殿" が女を知ったようだぜ。」
天元は、 "清く尊い" などと言われてしまう杏寿郎が、人間らしい面を順調に表へ出せるようになっている事が嬉しくてそんな冗談を言った。
しかしその冗談に行冥と実弥は固まり、菫への初心で純粋な想いを知るしのぶはピキッと青筋を浮かべた。
し「嘘だとしても本当だとしても、大きな声で言って良い内容ではないと思います。」
杏「胡蝶の言う通りだ!!そして俺はそのような事はしていない!!まだ婚姻前だぞ!!!」
天「 "まだ" ?」
天元がそう揶揄うように揚げ足を取ると、杏寿郎の頬はカッと熱を持った。
その様子を見ていた実弥は眉を寄せながら天元に目を遣る。
実「面白半分に引っ掻き回すなァ。煉獄も馬鹿真面目に相手すんじゃねェ。」
杏「…うむ。ありがとう、不死川。」
杏寿郎はその場を収めてくれた実弥に礼を言うと天元を見上げた。
杏「宇髄、声を荒げてすまなかった。ただ菫さんの名誉にも関わる事なのでそういった冗談は今後止めて欲しい。」
軽い冗談を大事にされてしまった天元は納得のいっていない顔をしていたが、杏寿郎に真剣な顔で頼まれると降参したように溜息をついた。