第28章 違和感
(……………。)
一方、菫は湯船に浸かりながらぐるぐると思考を巡らせていた。
何時までも頭に杏寿郎の顔が浮かび、声が響く。
(……駄目。蓮華の事もあるけど、私は…家を出た "後" 、決意をしたんだ。それを崩してしまったら何か取り返しがつかない事が起きそうで…、どうしても、出来ない…。)
菫は家や妹の事の他に、何か得体の知れない物に恐怖に近い感情を抱いていた。
そしていくら考えてもその正体は掴めなかった。
杏「菫さん!居るか!!」
―――ゴンッ
入浴中に戸の向こうから声を掛けられ、菫は思わず後退って後頭部を壁に打ち付けた。
「痛っ」
杏「ああ、居たな!何時までも挨拶に来ないので心配した!!だが二時間近く入っているぞ!湯も冷めたろう!」
「え…、」
菫がハッとすると、確かに湯は冷めていて体も冷え始めていた。
一方、杏寿郎は水音が聞こえると菫が今風呂場に居るのだとやっと意識して固まった。