第26章 逃避
(取り敢えずいつでも出られるようにだけしておいて、先に圭太さんと話をしよう。明日にでも蝶屋敷へ行って…。)
杏寿郎はそんな事を考えている菫を大きな目でじっと見ていた。
それでも菫が今晒しているのは目元だけだ。
正確な感情までは汲み取れない。
杏(留まってくれたのだろうか。)
杏寿郎は『決定的な事さえ言わせなければ、まだ挽回の余地がある。』と思っていた。
「…また後でお話し致します。では着替えを用意しておきますのでお風呂にお入り下さいませ。」
杏「……ああ。」
そう返事をすると、何となく空気が重くなった居間を出て風呂へ向かった。
―――
(着物はこれで全部。あとは…、)
杏寿郎が風呂に入っている間、菫は多くない私物を纏めていた。