第21章 右腕の代わり
し「勝手にお教えする事は出来ませんが、そうですね。昼間、霞ヶ関へ散歩しに行かれてみては如何でしょう。」
杏「…分かった。」
しのぶが伝えたい事は分からなかったが、行くことに意味があるのだろうと悟り、杏寿郎は静かに頷いた。
それを確認するとしのぶはぽんと手を叩く。
し「では此方に泊まって頂きます。清水さんには鴉を飛ばしておきました。ご安心下さい。」
杏「それは駄目だ!!此方に来てしまう!!!」
杏寿郎は急いで窓に駆け寄り空を見上げたが、鴉はもう見えなかった。
―――
「え……、」
しのぶの鴉から杏寿郎の負傷を聞いた菫は青くなった。
「た、たいへん…、はやくいかなきゃ…何を持っていけば……着るもの…はあるし、あ…食べ物、そうだ、食べ物!」
菫はわたわたと作っておいた大量の食事をいくつもの風呂敷に包むとすぐに屋敷を飛び出した。
―――ハッハッ
菫は息を上げ、何度も雪に足を取られて転びそうになりながら蝶屋敷まで走った。