第1章 事の始まり
「炎柱様のお世話を…?」
菫は目を丸くしながら長い付き合いである同僚の男を振り返った。
その同僚は菫と同じく目元以外を隠した装いをしていた。
背には『隠』という大きな文字が入っている。
菫に問われた鬼殺隊の隠、佐藤 圭太は頷いた。
圭「ああ。実家をお出になられたそうなのだが、支給された屋敷を管理する事が難しいらしく今回のお話を頂いた。一応、菫に言っておこうと思って…。」
圭太が菫に伝えた理由は、菫が鬼殺隊に入隊した理由と同じものだった。
圭「……相変わらずだな。相変わらず、菫は炎柱様を心から敬愛しているんだな。」
圭太が面白そうに見つめる先で、菫は拳を握って興奮したように目を輝かせていた。
「当たり前です。本当に素晴らしいお方ですもの。お近付きになられるなんて羨ましい…。」
圭「ならお前が行ってみるか。」
菫が余りにも残念そうに言うので圭太は面白半分にそんな事を言った。
すると菫はパッと目を輝かせる。
「是非!!荷物を纏めて今日にでも、」
そう言いながら菫が部屋へ駆けて行こうとすると、圭太は慌てて呼び止めた。