第2章 高尾和成【黒バス】
俺の彼女はかわいい。彼氏の贔屓目なしにしてもめちゃくちゃかわいい。あの真ちゃんにだって「あやめは美人なのだよ。だからお前のようやつにはやらん」って言われた。
あやめは真ちゃんの彼女じゃない。真ちゃんの妹でもない。従姉妹ですらない。
でも、あやめと真ちゃんは幼馴染だ。昔から仲が良くて、彼女は真ちゃんって呼ぶし、真ちゃんは超過保護。過保護が過ぎるくらい過保護。
「あやめ」
「高尾くん! おつかれさま!」
部活が終わり、部室の外で俺を待っていてくれたあやめに声をかけると、まるで花が咲いたような笑みを浮かべて手を振ってくれた。ああ、かわいい。
「あやめ、家まで送るのだよ」
「真ちゃんもおつかれさま!」
「毎度のことだけど、俺があやめの彼氏だから! 俺が送って行くから!」
「ふん、途中で分かれるやつが何を言うのだよ」
つき、と針で刺されたような痛みが走る。
そう、幼馴染で家も近い真ちゃんが最後まで送って行くから、俺はいつも途中まで。まあ、高校生だから電車の関係だってあるわけだし。家まで送っていけるのが理想だとは思っているけど、それが叶わないのは仕方ない。
救いがあるとするなら、こんな遅い時間でも、最後まで真ちゃんがあやめのそばにいること。いや、嬉しくはないけど。不本意だけど。でも暗い中一人で帰らせることがなくて良かったとは思っている。複雑な気持ちはいつも変わらないけど。
俺が幼馴染で、家が近くて、最後まであやめと一緒にいられたら良かったのに。
「高尾くん、どうかした?」
「……いんや、なんもないよ」
「おい、高尾、お前ロッカー開きっぱなしだぞ、部室閉めたいんだよ早くしろ」
「あ、マジっすか。すんません! あやめ、ちょい待ってて」
やっべ。今日は宮地先輩が鍵閉め当番だったか。
慌てて部室に逆戻り。あやめのこと待たせちまうな、早くしよ。