• テキストサイズ

短編集

第2章 高尾和成【黒バス】


 ふと窓から見上げた空には、綺麗な満月が見えた。

「あやめ……」
『なあに?』
「月が綺麗だな……」
『……えっ』

 考えなしに口にした言葉に、慌てたようなあやめの声が重なった。
 月が綺麗……って、俺っ……。

「あ、いや、その、なんつーかその、変な意味じゃなくて、その、」

 うまく取り繕えない。クソ、こんな時こそ上手く回れよ俺の口!

『……ちがうの?』

 小さくこぼれるようにして聞こえた声は、不安げで。
 あーもう、俺の完敗。

「ちがく、ねえよ。言ったのは、その、月見て本当に綺麗だったからだけど……意味、も、ほんとにそう思ってるからな」
『っあ、ありがとう……』

 俺、明日あやめと会って普通でいられる気しない。
 そんな俺と、スマホを挟んだあやめとの会話はそのあとしばらく続いて、その間もずっと、満月は俺のことを眺めていたんだろう。憎たらしいな。
 けど、あやめのこと愛してるのは、俺の本当の気持ちだ。
/ 25ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp