第2章 高尾和成【黒バス】
ふと窓から見上げた空には、綺麗な満月が見えた。
「あやめ……」
『なあに?』
「月が綺麗だな……」
『……えっ』
考えなしに口にした言葉に、慌てたようなあやめの声が重なった。
月が綺麗……って、俺っ……。
「あ、いや、その、なんつーかその、変な意味じゃなくて、その、」
うまく取り繕えない。クソ、こんな時こそ上手く回れよ俺の口!
『……ちがうの?』
小さくこぼれるようにして聞こえた声は、不安げで。
あーもう、俺の完敗。
「ちがく、ねえよ。言ったのは、その、月見て本当に綺麗だったからだけど……意味、も、ほんとにそう思ってるからな」
『っあ、ありがとう……』
俺、明日あやめと会って普通でいられる気しない。
そんな俺と、スマホを挟んだあやめとの会話はそのあとしばらく続いて、その間もずっと、満月は俺のことを眺めていたんだろう。憎たらしいな。
けど、あやめのこと愛してるのは、俺の本当の気持ちだ。