第2章 845年
845年
100年間、壁は壊されなかった。
だからと言ってそれが今日も続くという保証はない。
『(何だろう、胸騒ぎがする。朝からずっと.....)』
「エルどうしたの?窓を睨みつけて」
『.....お母さん。いや、何でもないよ』
「そう?酷い顔だったわよ」
『大丈夫、それよりほら、お父さんが非番で帰ってくるんだから、早く美味しいご飯作ろうよ』
「はいはい、本当にエルはお父さんが大好きね」
『ちがっ///やめてよお母さん!』
「ふふっ」
こんな平和がこれから先ずっと続くなんて
勘違いをしていた。
世界は、思っているよりずっと残酷だ。
ゴゴゴゴゴー
「きゃあっ」
突然感じた大きな地鳴りと揺れ
折角、お父さんのために作っていた料理がテーブルから落ちた。
「な、何かしら......」
『様子を見てくるから、お母さんはここにいて』
そんな事言わなければ。
お母さんは逃げられたかもしれないのに。
走って街を駆けて、壁の近くに来た。
嫌な予感はこれだ。
普通の地震じゃないのは明確だった。
『......な、にあれ......』
ウォールマリアの50mある壁に
見たこともない大きな手が掛かっている。
「巨人だ!!」
誰かが叫んだ。