万華鏡の姫君1章 〜特級呪術師&最強柱〜【鬼滅】【呪術】
第6章 6章 砕けた硝子の意味
切りつけられた時間は数秒にも満たないが、鬼にとっては、地獄のような痛みを長時間受け続けたようなものだ。
酷い痛みから再生する力も、声を出す力も残っていない。
一掃のこと殺された方がどんなに楽か。
しかし絢蘭は表情を変えず、鬼が再生しないようにバラバラの体を呪力で縛った。
勿論、うるさい口もきけないように。
『はぁ…はぁ…。足りない。』
さすがに息を斬らしているが、怒りは収まる気配を見せない。
そんな様子をずっと見ていた有一郎はハッとして、鉛の様に重い体を片腕で引きずりながら、必死に絢蘭の元へ向かう。
有「はぁ…。絢蘭!」
『!!ッ。ゆう!!ごめん!いつの間にか結界を解いちゃったみたい。大丈夫?怪我してない?』
有一郎の声に我に返り、今だに危険な状態の彼を慌ててくまなく確認する絢蘭。
その様子に、静かに安心する有一郎。
絢蘭が戦う姿に圧倒されていたが、これ以上戦わせたら心が壊れてしまうと危機感を持ったからだ。
それに最後は体もふらつきながらも、怒りが制御出来ていないのにまだ戦おうとしていた。
危険な状態の絢蘭を止められるのは有一郎しかいなく、必死で彼女の手を掴むことで、意識を鬼から有一郎へ向けたのだ。
彼女自身の心配よりも自分の心配をする絢蘭に、苦笑いを向けながらも、なんとか上身を起こし絢蘭を抱き締め、落ち着くように背中を擦る。
有「落ち着いて。絢蘭のお陰で大丈夫だよ。だから落ち着いてゆっくり呼吸して?」
できるだけ優しく声をかけ、落ち着くのを待つ。
『ふうー。ありがとうゆう。』
有「もう大丈夫だな?良かった。」
ようやくいつもの表情に戻ってくれて嬉しい有一郎。
さっきまでの絢蘭は別人のようだったからだ。
彼のために怒り、戦ってくれたがその姿別人で、いつも笑顔で優しい絢蘭を失いそうで怖かったのだ。
もう一度強く絢蘭を抱き締め、1度離し真面目な表情になる有一郎。