第12章 陽だまりポカポカ小噺 其の壱
「邪魔するぜー!不死川!」
「本気で邪魔だから帰ってくれェ。また来たのかよ?」
音柱 宇髄天元
コイツは事あるごとに俺の家に来やがる。
それはもう何度も何度も何度も…
家に来る大半の理由は…
「聞けよー!俺のほの花がさ、派手に可愛いんだって!」
「うるせェなァッ!何回"可愛い可愛い"言いに来るんだ!いい加減鬱陶しいぜェ。」
「あ?何だよ、羨ましいのか?」
「ちげェェッ!!」
ほの花っつーのはコイツの継子でつい最近恋仲になったらしい。
恋仲になるまで悶々としたほの花への想いの丈を俺に何度も言いに来やがって、最後まで聞かないと帰らねェ。
どうせすぐに恋仲になるだろうと踏んでいた俺はそれまでの我慢だと言い聞かせて耐えていたのだが…。
この男は恋仲になったらなったで今度は如何にほの花が可愛いかということをわざわざ言いに来るようになった。
俺とてほの花は妹のような存在で、人懐っこくて可愛いと思っている。
しかし、最初そんなことを口に出して言おうものなら「俺のほの花を可愛いとか言うな」と謎の嫉妬をぶつけてきやがって、戦闘態勢になりそうだった。
「ほらよ、これ土産な。ほの花の帰省に付き合ってたからよ。」
「そりゃァーどーも。用が済んだら早く帰れェ。」
「済んでねぇ。それがさ、ほの花に花飾りやったって言っただろ?」
「あー、言ってたなァ。」
「それを最近急に付けなくなってさ。何で?って思うだろ?お前何でだと思う?ククッ、可愛いんだぜ〜!」
最早どうでもいい。
コイツのほの花関係の話はオチもなければただの惚気。
俺が答えなくてもどうせ勝手に話して勝手に解決して勝手に帰るんだ。
「"折角頂いたのにたくさん使って汚れるのが嫌なんです"っつーんだよ!クソ可愛いだろ?!ンなもん何百個でも派手に買ってやるっつーのによ!な?可愛いだろ?!あ、そろそろ任務行ってくらぁ!じゃあな、不死川!ほの花に変な虫つきそうだったらぶっ殺しておいてくれ!」
こういうことが月に何度あるか。
もう数えてすらいない。
手ぶらできたことは一度もないのがせめてもの礼儀がなってるとは思うが…
もう二度と来ないでくれと心底願っている。
(どうせまたすぐ来るだろうがよ。)
(終)