第29章 停戦協定※
いつもよりも色っぽいほの花が俺を見上げればドクンと跳ねる心臓が煩い。
瞼墨が目尻にかけて引かれているせいで色香の漂う流し目がいつものぱっちりした可愛い瞳よりも派手に煽ってきやがる。
色気を醸し出す目尻にも口づけを落とせば擽ったそうに身を捩り、ニコッと笑うほの花はいつものほの花。
着物からは瑠璃の香の匂いがすると言うのにほの花が纏っていれば、彼女の匂いと混ざって言いようのない性欲がどんどんと溢れてくるのだ。
不思議なもので誰の匂いを纏っていたところで結局ほの花だから惹かれるのだ。
肩を露わにしたのは俺だが胸元は派手に開け広げられていて其処から見える豊かな膨らみには俺の残した痕が点在している。
こんなに乳をお披露目して尚且つ所有印を晒していたらコイツは間違いなく遊女か淫女にしか見えないだろう。
このまま外に出れば男に抱いてくれって言ってるようなものだ。
目尻から頬を伝い、再び唇に口づけをするといつもよりも赤い唇が目に入る。
「…瑠璃の紅か…?こういう色も似合うけどよ…、俺は素肌のお前が一番好きだ。俺色に染められるだろ?」
この容姿だ。
似合わない色のが少ないだろう。
でも、何も纏っていない素のほの花が一番美しくて一番贅沢なのを誰も知らない。
何も纏わず此処まで美しいならばそれを愛でたいし、その状態で俺の色に染めてやりたい。
俺を見て上気させて赤く染まった頬に、その瞳に俺を映して、俺の名を呼んでほしい。
「…変な天元…。私はずっと天元色に染まってるのに…。天元しか知らないんだから当たり前じゃん。」
「…そうだな。俺以外の男なんて知らなくていい。」
ほの花が俺以外の名を呼び、俺以外の男の下で喘ぐ姿を想像したくもない。
万が一、コイツと出会うのがもっと遅くて、生娘を奪われていたのであれば俺の嫉妬は凄まじかっただろう。
コイツの処女を奪った男のことが気になって仕方ない筈だ。
その心配がないだけでも俺は恵まれている。
こんな女が俺しか知らないなんてハッキリ言えば俺は幸運としか言いようがないのだから。