第4章 病魔 前編
「我々悪魔執事に、主様御自身が隠されていることと———何らかの関係があるような気がしてならないのです」
ルカスは顎に指をあてる。
「気になること———か」
ルカスの脳裏に、彼女の笑顔が映し出される。
と同時に、痛ましくも美しい、あの傷痕のことが浮かび上がった。
(医師として、女性の肌にある傷痕のことを口にする訳にはいかないさ)
「ベリアン、私からひとつ助言をしよう」
彼の瞳をまっすぐにみつめ、唇をひらく。
琥珀色の瞳は常の柔さを滲ませつつも、何処か棘も含んでいた。
「時間が必要さ。主様にとっても、………そして我々にも」
「! ルカスさん」
惑いを映していたロードナイトの双眸がさっと澄み渡る。
「君だって気づいているだろう?
主様が、我々との間に壁を作っていることを………。」
その言葉にこっくりする彼。ルカスはさらに声を紡いだ。
「主様のことをもっと知りたいのは私も同じだ。
でもだからこそ、
主様が御自身から口にできるようになるまで、待つべきではないかな」
「そう……ですね………。」
頷くその瞳がゆらめいている。そんな彼に声の温度を低めた。