第3章 捻れた現実
………どのくらい、そうしていただろうか。
「もう……大丈夫よ」
ややあって、彼女がつぶやいた。
「ありがとう。それと……ごめんなさい」
まだかすかに露を残しながらも、微笑うヴァリス。
けれどその笑顔は、先刻に比べれば幾分か晴やかなもので………。
「気にしなくていいっすよ」
心から口にしながら、ふいにある案が思考に載せられる。
「ねぇ……主様、」
「?」
穏やかな眼差しで彼を見上げる瞳に、悪戯っぽくその唇が笑みを描いた。
「オレのおすすめの場所、あなたになら教えてあげますよ」
「! いいの……?」
「はい。ラムリ、主様の眼、隠して」
「う、うん」
すぅっと黒曜に染まる視界。
けれどすぐにアモンの手が、みずからのそれを包み込む。
「オレが手を引きますから。………いきましょ」
「うんっ」